2005年12月10日

輪廻〜第一話〜

…昔、遠い昔の話だ。
熊野別当が俺ではなく、親父「湛快」の時代。

叔父がまだ熊野に居た頃、俺は歳若くもどこか食えない叔父に懐いていた時期があった。
今思い返せばあの叔父に懐いていた事実でさえ嫌気がさす。


「会う度に兄上に似てきて…可愛い甥っ子の成長は早いものですね?…ヒノエ。」

「…親父の話ばっかすんなよ、クソ坊主。」


当時から俺は捻くれていて、そんな悪態しか返せずにあいつと夏の熊野を過ごした。

比叡に入ってからは熊野にはさして戻らなかった叔父だが、偶にひょっこりと帰ってきては小さい俺や敦盛と戯れ親父に顔を見せて少々滞在し、そして京へと戻る。

…今回もそうだと、そう…思っていた。


夜になると、決まって親父と二人で酒を煽りながら難しい話をしていた。

よく勘が働くと誉められるものの、それは存外「嫌な」予感ばかりが当たってしまう。

戸板のその向こう、障子越しに灯篭の明かりのみ照らされくっきりと浮かぶ弁慶と湛快の陰影。
その二つの陰影を木陰に隠れながら聞き耳をたてジッと見つめる位しか、「別当」の名も地位も…そして「年齢」も満たないヒノエにはできずにいた。



「!!……ッ…くそ…っ…」



もう、何年も昔の話。
ようやく己の中で自己処理できなんとか自分らしく振舞えるようになったというのに。

“八葉”という名の輪廻の鎖に縛られ、アンタと俺は数年振りに再会したんだ。



『げっ…アンタも居るのかよ』

『ふふっ、詰めが甘いんですよ。』


六波羅での出会い。
それは龍神の神子を拝みに行った京での出来事。

仲間として同行する、と可愛い姫君に言った直後の最悪の再開。


…なんでアンタは何食わぬ顔して、そうやって平然と俺の前に立ってやがるんだ…?


俺に…俺の中に勝手に、アンタを刻んでおいて…



そりゃ、無いんじゃねぇの?






≪続≫



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posted by 黒來るい at 19:55| 大阪 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 十六夜の君〜遥か3・妄想綴り〜 | 更新情報をチェックする

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